
高齢者は様々な要因で骨折引き起こします。骨折をしたことにより本人だけでなく家族にも介護や看病によって大きな負担を強いることになります。
今回の記事では骨折を未然に防ぐためどのようなことに気を付けた生活を送ればよいのか、多角的に解説していきます。
あんどう接骨院では来院された高齢者の方に家族構成・住環境・運動頻度・食生活など事細かくお聞かせいただいた上でご本人に合った治療計画や転倒予防運動をご提案しています。
この記事をお読みいただいたご家族様はぜひ当院にご相談ください。
はじめに:高齢化社会における「転倒」という課題

日本は世界でも有数の高齢化社会を迎え、平均寿命が延びる一方で、「健康寿命」をいかに延ばすかが重要なテーマとなっています。健康寿命とは、心身ともに自立して健康的な生活を送ることができる期間のこと。この健康寿命を短くしてしまう大きな要因の一つが「転倒」です。
高齢者の転倒は、単なるアクシデントではありません。転倒によって骨折、特に大腿骨近位部骨折などを負うと、入院・手術が必要となるだけでなく、その後の生活の質(QOL)を著しく低下させ、寝たきり状態に陥るリスクを高めます。厚生労働省の統計によると、要介護状態となる原因の約15%が骨折・転倒であると言われており、介護を必要とするきっかけとして無視できない存在です。
骨折は、軽微な外力でも起こりうる「脆弱性骨折」として、高齢者に特に多く見られます。骨密度が低下する骨粗鬆症が背景にあるため、若い頃にはなんでもなかったような転倒でも、致命的な結果を招きかねません。では、この深刻な転倒と骨折の連鎖を断ち切るために、私たちは何をすべきでしょうか。
本稿では、高齢者の転倒がなぜ起こるのか、そのメカニズムと具体的な予防策について解説します。特に、接骨院の柔道整復師が果たす役割に焦点を当て、単なる治療だけでなく、予防の観点からいかにして健康寿命の延伸に貢献できるかを探っていきます。
1. 高齢者が転びやすいのはなぜか?-転倒のメカニズム-

転倒は、いくつかの要因が複合的に絡み合って発生します。その主な要因を「内的要因」と「外的要因」に分けて見ていきましょう。
1-1. 内的要因:身体機能の変化
加齢に伴い、私たちの身体は様々な変化を経験します。これらの変化が転倒リスクを内側から高めます。
- 筋力・バランス感覚の低下: 特に下半身(太ももやふくらはぎ)の筋力は、立ち上がりや歩行を安定させるために不可欠です。しかし、加齢によってこれらの筋力は徐々に衰え、歩幅が狭くなったり、すり足になったりすることで、つまずきやすくなります。また、バランスを司る平衡感覚も衰え、わずかな重心の移動にも対応しきれず、ふらつきやすくなります。
- 姿勢の変化と関節の可動域の減少: 背中が丸くなる円背(えんばい)や、股関節・膝関節が硬くなることで、歩行時の重心が不安定になります。また、関節の動きが制限されると、とっさに足を踏み出したり、手で体を支えたりする動作が困難になります。
- 視力・聴力の衰え: 視覚は段差や障害物を認識するために重要ですが、白内障などで視界がかすんだり、視野が狭くなったりすると、周囲の環境を正確に把握できなくなります。また、聴力は、足音や周囲の物音で自分の位置や動きを把握する上でも重要な役割を担っており、その衰えもバランス感覚に影響を与えます。
- 病気や薬の影響: 脳血管疾患の後遺症やパーキンソン病などは、歩行障害を引き起こすことがあります。また、血圧を下げる薬、睡眠薬、精神安定剤などの副作用として、めまいやふらつき、眠気などが生じ、転倒リスクを高めることもあります。
1-2. 外的要因:生活環境
身体の状態だけでなく、生活環境も転倒に大きく影響します。
- 住環境: 家の中にある小さな段差や敷物、滑りやすい床などがつまずきの原因となります。また、廊下や階段の手すりがなかったり、照明が暗かったりすることもリスクを高めます。
- 履物: サイズが合わない靴、底が滑りやすいスリッパ、かかとがないサンダルなどは、歩行を不安定にさせ、転倒につながりやすくなります。
- 服装: 長すぎるズボンやスカートの裾、だぶついた上着などが足に絡まり、つまずく原因となることがあります。
転倒を未然に防ぐためには、これらの内的・外的要因を総合的に評価し、個々の状態に合わせた対策を講じることが不可欠です。

2. 接骨院の柔道整復師にできること
「骨折したら病院に行く」という認識は一般的ですが、転倒による骨折を「未然に防ぐ」ために、接骨院が果たす役割は非常に大きいものです。接骨院では、国家資格を持つ柔道整復師が施術にあたります。柔道整復師は、骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷といった急性の外傷に対し、手術や投薬に頼らず、手技や物理療法を用いて治療を行う専門家です。しかし、その役割は単なる治療にとどまりません。転倒予防という観点から、接骨院の柔道整復師ができることを具体的に見ていきましょう。
2-1. 身体機能の評価と改善
柔道整復師は、患者様の身体の状態を丁寧に診察・評価することから始めます。
- 姿勢や歩行のチェック: 立ち方や歩き方、重心の偏りなどを確認し、どこに弱点があるのか、転倒しやすい動作パターンはないかを分析します。
- 筋力や可動域の測定: 筋肉のつき方、関節の柔軟性などを触診や簡単な運動テストで確認し、転倒リスクにつながる部位を特定します。
この評価に基づいて、一人ひとりに合わせた施術計画を立てます。硬くなった筋肉を和らげる手技療法や、関節の動きを改善するストレッチ、筋力強化のための運動指導など、多様なアプローチを組み合わせて身体機能の改善を目指します。例えば、足首や股関節の柔軟性を高めることで、つまずいた際に体勢を立て直しやすくなります。また、体幹や下肢の筋力を強化するエクササイズは、バランスを安定させ、ふらつきを減らすのに役立ちます。
2-2. 転倒予防のための運動指導
接骨院では、施術だけでなく、患者様自身が自宅でも継続できるような運動指導を行います。これは、筋力やバランス能力の維持・向上に不可欠です。
- バランス訓練: 片足立ちや、線の上を歩く練習など、バランス感覚を養うためのシンプルな訓練は、日常の動作の安定性を高めます。
- 筋力強化運動: 椅子に座ったままでできるスクワットや、ふくらはぎの上げ下げ運動など、高齢者でも安全にできる筋力トレーニングを指導します。
- 柔軟性向上のためのストレッチ: 関節の動きを滑らかにするためのストレッチは、転倒した際に怪我をしにくくするだけでなく、日々の生活動作を楽にします。
これらの運動は、一度身につければご自身のペースで続けられるため、予防効果が持続します。柔道整復師は、安全な方法や正しいフォームを丁寧に指導し、無理のない範囲で継続できるプログラムを提案します。
2-3. 日常生活のアドバイス
接骨院では、身体機能の改善と並行して、転倒リスクを減らすための具体的なアドバイスも提供します。
- 履物の選び方: 滑りにくい靴底の靴や、かかとをしっかり固定できる履物を推奨します。
- 杖や歩行器の使用: 必要に応じて、正しい杖の選び方や使い方を指導します。
- 動作の工夫: 急に立ち上がらない、段差をまたぐ際は手すりを利用するなど、転倒しやすい場面での動作を安全に行うためのコツを伝えます。
- 住環境のチェック: 室内環境の危険箇所(滑りやすい床、配線、段差など)を患者様と一緒に確認し、改善策を提案することもあります。
柔道整復師は、これらの多角的なアプローチを通じて、高齢者が安心して活動できる身体と環境を整えるお手伝いをします。


3. 転倒予防から骨折後のリハビリまで-接骨院の役割-
もし万が一、転倒してしまった場合でも、接骨院は大きな役割を果たします。骨折の応急処置や、医師の同意に基づいたその後の施術、そして機能回復のためのリハビリテーションなど、急性期から回復期まで一貫したサポートを提供します。
- 応急処置: 柔道整復師は、骨折や脱臼などの疑いがある場合、患部を固定するなどの適切な応急処置を行います。その上で、医師の診断を受けるように促します。
- 機能回復のためのリハビリ: 骨折が治癒した後も、筋力や関節の機能が低下していることが少なくありません。接骨院では、固まった関節の可動域を広げたり、衰えた筋力を回復させたりするための運動療法や物理療法を実施し、日常生活動作(ADL)の再獲得をサポートします。これは、再度の転倒や、それに伴う新たな骨折を防ぐ上で非常に重要です。
このように、接骨院は「骨折の予防」から「骨折後の機能回復」まで、一貫して高齢者の健康を支えるパートナーとなりうるのです。

まとめ:転ばぬ先の杖-予防こそが最善の策-

高齢者の転倒とそれに伴う骨折は、本人やご家族の生活に深刻な影響を与える可能性があります。しかし、その多くは適切な予防策を講じることで未然に防ぐことが可能です。
接骨院の柔道整復師は、単に痛みを和らげるだけでなく、身体の根本的な弱点を改善し、転倒しにくい身体づくりをサポートする専門家です。加齢による身体機能の変化を正しく理解し、個々の状態に合わせたオーダーメイドの施術と運動指導を提供することで、高齢者が自信を持って活動できる毎日を取り戻すお手伝いをします。
転倒は、誰にでも起こりうることです。しかし、「もう歳だから仕方がない」と諦める必要はありません。大切なのは、早めに自分の身体と向き合い、適切な予防策を講じることです。 接骨院は、まさに「転ばぬ先の杖」。健康なうちから気軽に相談し、専門的なアドバイスを受けることで、健康寿命を延ばし、いつまでも自立した豊かな生活を送るための第一歩を踏み出してみませんか。地域社会における介護予防の拠点としても、接骨院の役割は今後ますます重要になっていくでしょう。

あんどう接骨院
院長 安藤雅紀(あんどう まさのり)
- 愛知県名古屋市出身(S63年4月21日生まれ)
- 米田柔整専門学校卒業
- 天白区の接骨院にて11年間修業
- 名東区のリハビリデイサービスにて2年間機能訓練指導員として従事
現在”愛知県立日進中学校 男子バスケットボール部外部コーチ”を務める
日進市内ミニバスケットボールチームにトレーナー・コーチとして関わる


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