
バスケットボールは、華麗なパスワーク、素早いドリブル、そして迫力あるジャンプシュートが魅力のスポーツです。しかし、その激しい動きゆえに、選手たちは常に怪我のリスクにさらされています。中でも、最も頻繁に発生する怪我の一つが「足関節捻挫」です。
愛知県日進市のあんどう接骨院には多くのバスケットボール選手が来院されます。足関節捻挫は「初期対応」「適切な固定」「時期に合ったリハビリ」この3つが早期の競技復帰へのカギとなります。「湿布を貼って、安静」では再発のリスクは高まります。そこで当院では一人一人に合った治療計画を立てることで競技復帰への最短ルート提案しています。
「たかが捻挫」と安易に考えてしまう人も少なくありませんが、適切な処置やリハビリを怠ると、慢性的な不安定性や再発癖につながり、選手生命を脅かす可能性すらあります。本稿では、バスケットボールに特化した足関節捻挫の解説から、怪我をした際の初期対応、そして接骨院での専門的な治療と復帰までの道のりについて、多角的に掘り下げていきます。

第1章 バスケットボールにおける足関節捻挫の実態

バスケットボールは、急激な方向転換(カッティング)、ストップ&ゴー、そして頻繁なジャンプと着地を繰り返すスポーツです。これらの動作は、足首に想像以上の負担をかけます。特に、以下のような場面で足関節捻挫は発生しやすいとされています。
- ジャンプからの着地: リバウンドやシュート、レイアップシュート後の着地時、相手の足を踏んでしまったり、バランスを崩したりすることで足首が内側にひねられ(内反捻挫)、外側の靭帯が損傷することが最も多いパターンです。
- 急激な方向転換: ディフェンスをかわすためのドリブルや、パスをもらうためのカットインなど、素早い方向転換時に足首が不自然な角度にひねられることがあります。
- 相手との接触: プレー中の接触によって、体勢を崩し、足首に不必要な力が加わることで発生します。
バスケットボール選手における足関節捻挫の多くは「内反捻挫」であり、足首の外側にある「前距腓靭帯」や「踵腓靭帯」といった靭帯が損傷します。これらの靭帯は、足首の安定性を保つ上で非常に重要な役割を担っており、一度損傷すると、足首が不安定になり、再発を繰り返しやすい状態になってしまいます。
また、ある研究では、試合時の足関節捻挫発生率が練習時よりも高い傾向にあることが示されており、より強度が高く、予測不能な動きが多い試合環境がリスクを高めていることがわかります。

第2章 捻挫の重症度分類と自己診断の限界

足関節捻挫は、損傷した靭帯の程度によって重症度が3つのグレードに分類されます。
- Grade I(軽度)
- 靭帯がわずかに伸びた状態。
- 軽い痛みや腫れ、内出血が見られることがあるが、自力での歩行は可能。
- 靭帯に部分的な損傷はあるものの、機能的な安定性は保たれている。
- Grade II(中等度)
- 靭帯の一部が断裂した状態。
- 強い痛みと腫れ、内出血が顕著に見られる。
- 歩行が困難になる場合が多い。
- 関節の不安定性が生じ始める。
- Grade III(重度)
- 靭帯が完全に断裂した状態。
- 激痛と著しい腫れ、内出血が広範囲に及ぶ。
- 自力での歩行はほぼ不可能。
- 関節がグラグラと不安定になる(異常可動性)。骨折を合併している可能性も高い。
怪我をした直後、特に興奮状態にあると、痛みを過小評価しがちです。しかし、見た目の腫れや痛みだけで重症度を正確に判断することは非常に難しく、Grade Iだと思ってプレーを続行した結果、靭帯の損傷をさらに悪化させてしまうケースも少なくありません。
「少し痛いけど、歩けるから大丈夫」と自己判断することは非常に危険です。特にバスケットボール選手の場合、捻挫による靭帯損傷は、単なる痛みだけでなく、その後のパフォーマンス低下や、より重篤な怪我(軟骨損傷、他の靭帯損傷など)のリスクを高めることにつながります。

第3章 負傷直後の適切な対応:RICE処置からPRICE処置、POLICE処置へ
足関節捻挫が発生した直後、まず行うべきは「応急処置」です。かつては「RICE処置」が推奨されてきましたが、近年ではさらに進化した「PRICE処置」や「POLICE処置」が提唱されています。
| 処置名 | 項目 | 意味 | 実施内容 |
| RICE | Rest | 安静 | 負傷した部位を動かさず、体重をかけない。松葉杖の使用も検討。 |
| Ice | 冷却 | 氷嚢やアイスパックなどで患部を15〜20分間冷やす。タオルなどで直接肌に当たらないように注意。 | |
| Compression | 圧迫 | 弾性包帯などで患部を適度に圧迫し、腫れや内出血を抑える。強く巻きすぎないように注意。 | |
| Elevation | 挙上 | 患部を心臓より高い位置に上げ、重力で血液が患部に集まるのを防ぐ。 | |
| PRICE | Protection | 保護 | 患部を保護し、再損傷を防ぐ。ギプスやシーネ、サポーターなどを使用する。 |
| POLICE | Protection | 保護 | 患部を保護し、再損傷を防ぐ。 |
| Optimal Loading | 最適な負荷 | 痛みのない範囲で少しずつ負荷をかけ、治癒を促す。 |
特に重要なのは、炎症のピークである受傷後48〜72時間の初期対応です。この期間に適切なRICE処置を行うことで、腫れや痛みを最小限に抑え、その後の回復を早めることができます。
しかし、これらの応急処置はあくまでも「炎症の抑制」と「悪化の防止」を目的としたものです。自己判断で応急処置のみで済ませてしまうと、靭帯が不安定なまま癒合してしまい、捻挫の再発を繰り返す「慢性足関節不安定症」へと進行するリスクが高まります。

第4章 早期の接骨院受診が重要な理由
捻挫をした後、「整形外科に行くべきか、接骨院に行くべきか」と悩む方も多いでしょう。それぞれの役割を理解した上で、適切に使い分けることが重要です。
- 整形外科: 医師による診断、X線やMRIなどの画像検査、骨折や重度の靭帯断裂の確認、手術の適応判断などが主な役割です。骨折の疑いがある場合や、激しい痛み、歩行不能な状態であれば、まず整形外科を受診すべきです。
- 接骨院(柔道整復師): 骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷といった急性の外傷に対し、徒手整復や包帯・テーピングなどによる固定、電気治療、運動療法などを用いて回復を促します。特に、捻挫に対する初期の固定や、その後の機能回復に向けたリハビリテーションを得意としています。
バスケットボール選手の場合、単なる骨折の有無だけでなく、捻挫によって生じた関節のわずかなズレや、靭帯の損傷状態を正確に把握し、その後のパフォーマンス回復まで見据えた治療が必要です。接骨院では、徒手による細やかな検査や、超音波治療器、EMS(電気筋肉刺激)といった最新の機器を組み合わせることで、靭帯の回復を促進し、痛みの早期軽減を図ります。
また、多くの接骨院では、痛みが引いた後のリハビリに力を入れています。靭帯の回復だけでなく、捻挫によって低下した足首のバランス感覚(固有受容感覚)や、周囲の筋力、可動域を改善するためのトレーニング指導を受けることができます。このリハビリが、捻挫の再発を防ぐ鍵となります。

第5章 接骨院での治療とリハビリテーションの流れ
接骨院での足関節捻挫の治療は、損傷の程度や状態に合わせて、段階的に進められます。
- 【急性期】(受傷後〜約2週間)
- 評価と整復: 負傷した足首の状態を細かく触診し、関節のわずかなズレがあれば徒手で整復を行います。
- 固定と炎症の抑制: 包帯やテーピング、またはシーネなどを用いて患部をしっかりと固定し、靭帯の回復を促します。同時に、電気治療やアイシングなどで炎症を抑えます。
- 安静と回復: この期間は患部に過度な負担をかけないことが最優先です。松葉杖の使用指導なども行います。
- 【亜急性期・回復期】(受傷後約2週間〜)
- 可動域訓練: 炎症が治まり、痛みが軽減してきたら、徐々に固定を緩め、関節の可動域を広げるためのストレッチや運動を開始します。
- 筋力トレーニング: 足首を支える周囲の筋肉(下腿三頭筋や腓骨筋など)の筋力低下を防ぐためのトレーニングを行います。チューブを使ったエクササイズや、カーフレイズなどが効果的です。
- 【復帰準備期】(受傷後約4週〜)
- バランス感覚(固有受容感覚)の改善: 捻挫によって低下したバランス機能を回復させるためのトレーニングを行います。片足立ち、バランスボード、不安定な場所でのトレーニングなどを段階的に取り入れます。
- 競技特性に合わせた動作訓練: バスケのプレーに必要なストップ&ゴー、カッティング、ジャンプと着地といった動作を、正しいフォームで安全に行えるように訓練します。この段階で、再発予防のためのテーピングやサポーターの使用方法についても指導を受けます。
これらのリハビリを怠ると、足首の不安定性が残り、捻挫の再発リスクが大幅に高まります。専門家の指導のもと、痛みに耳を傾けながら、焦らずに段階的な回復を目指すことが重要です。

第6章 捻挫を繰り返さないための予防策

「捻挫は一度したら癖になる」とよく言われますが、これは正しい予防策とリハビリができていない場合に起こる現象です。バスケットボール選手が捻挫を繰り返さないためには、以下の予防策を日常的に取り入れることが不可欠です。
- 足首周囲の筋力強化: チューブトレーニングやカーフレイズなど、足首を支える筋肉を鍛えることで、急な動きにも対応できる強い足首を作ります。
- 可動域の確保: 足首の柔軟性が低いと、不自然な角度での着地や動きに対応できず、捻挫のリスクが高まります。日頃から足首を回したり、ストレッチを行ったりして、適切な可動域を維持しましょう。
- バランス感覚のトレーニング: バランスボードや不安定な場所での片足立ちなど、バランス感覚を養うトレーニングを継続的に行うことで、足首のセンサー機能を高め、バランスを崩した際に素早くリカバリーできるようになります。
- 適切なシューズとインソールの選択: 自分の足の形に合った、サポート力のあるハイカットのバスケットボールシューズを選ぶことも重要です。また、アーチサポート付きのインソールは、足の安定性を高め、捻挫予防に役立ちます。
- テーピングとサポーターの活用: 捻挫の既往がある場合は、試合や練習時に再発予防のためにテーピングやサポーターを積極的に使用しましょう。
まとめ
足関節捻挫は、バスケットボール選手にとって避けられないリスクの一つです。しかし、そのリスクを最小限に抑え、怪我をしたとしても早期に、そして安全に復帰するためには、正しい知識と専門家との連携が不可欠です。
「たかが捻挫」と安易に考えず、負傷直後からRICE処置を徹底し、速やかに接骨院で専門的な評価と治療を受けることが、将来の再発を防ぐための第一歩です。そして、痛みが引いた後も、自己流ではなく、専門家の指導のもとで段階的なリハビリを丁寧に行いましょう。
バスケットボールを長く、楽しく、そして高いレベルで続けるために、足首のケアと予防を日々の習慣に取り入れていきましょう。

あんどう接骨院
院長 安藤雅紀(あんどう まさのり)
- 愛知県名古屋市出身(S63年4月21日生まれ)
- 米田柔整専門学校卒業
- 天白区の接骨院にて11年間修業
- 名東区のリハビリデイサービスにて2年間機能訓練指導員として従事
現在”愛知県立日進中学校 男子バスケットボール部外部コーチ”を務める
日進市内ミニバスケットボールチームにトレーナー・コーチとして関わる


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